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今国会のみどころ–自然公園法・鳥獣保護法  そして、新・生物多様性国家戦略

2002.04.18
活動報告
2002年という年は、環境庁ができた1971年、地球サミットが開かれた1992年とともに、日本の自然保護に とって大きな転換点として記録されるに違いない。

環境省は、新・生物多様性国家戦略を今後の自然保護行政の指針と位置づけて改訂を目ざし、それに関連する形で、自 然公園法と鳥獣保護法の改正案を、1月21日に始まった第154回国会(会期6月19日まで)に提出した。

外務省問題、構造改革のゆくえなど物議をかもしている今国会だが、自然保護にかかわる重要な法律が審議される局面 でもある。会員の皆さんの地域から選出された議員がどのような議論を繰り広げるか、審議のゆくえに注目していただき たい。

 

〝景観〟から大きく前進 〝多様性〟初めて盛り込む –自然公園法

自然公園法改正に向けて、NACS-Jでは国立公園制度検討小委員会を設置して問題点を整理し提案を行ってきた。 環境省も中央環境審議会の下に設けた自然公園のあり方検討小委員会の中間答申を受けて、緊急に対応すべき施策を改正 案にまとめて国会に提出した。

従来の自然公園法は、景観の保全を重視したもので、生態系や生物多様性の保全という視点は弱かったが、改正案には 、国や自治体の責務に「生物多様性の確保」という言葉が初めて盛り込まれた。

また、脆弱な生態系を守るための「利用調整地区制度」、自然公園内の里地を保全するための「風景地保護協定」「公 園管理団体制度」などが盛り込まれた。  利用調整地区は、自然公園の特別地域内において、人の立ち入りを制限する必要があるような区域を指定し、そこに立 ち入るためには立ち入り認定証の携帯を必要とするというもので、知床半島の先端や小笠原南島など少人数の利用でも生 態系に影響が出るおそれのある場所が想定されている。

風景地保護協定は、阿蘇の草原などのように火入れ・放牧など人手が入ることによって維持されている景観、また公園 管理団体はこのような地域の維持にかかわる民間団体が想定されている。

 

アザラシやジュゴンが 保護の対象に加わるか? –鳥獣保護法

鳥獣保護法改正案は、明治以来使われてきたカタカナが、ひらがなに改められ、章立てもわかりやすくなった。

内容としては、法律の目的に「生物多様性の確保」が加えられ、鳥獣とは鳥類・哺乳類に属する野生動物と定義され、 これまでは対象外であったネズミ・モグラ類や、鯨類を除く海生哺乳類も法律の対象となった。

しかし、1999年の改正の際に付帯決議としてつけられた数多くの課題については、今回の改正では鉛製散弾などの 使用を禁ずる指定猟法禁止区域の指定、オジロワシなどへの鉛汚染につながる捕獲鳥獣の放置禁止など、緊急性を要する 一部の変更にとどまった。NGOが求めてきた、全国を原則禁猟とし狩猟は管理猟区のみで行う制度への変更や、公的機 関による有害鳥獣駆除の実施、駆除された個体の商業利用の禁止、野生生物保護の専門官の配置などは、今後の課題とし て残された。

3月25日には、NACS-Jは野生生物小委員会がまとめた「野生生物とその生息地を守るための27の提言」を発 表した。

これは、鳥獣保護法のみならず、制定から10年をむかえる種の保存法、早期制定が求められる外来種対策法まで視野 に入れ、21世紀の野生生物保護法制のあり方を提言したものだ。NACS-Jでは4月からの国会審議を通じて、鳥獣 保護法だけでなくすべての野生生物保護法制を生物多様性の保全という視点から見直して行きたい。

 

21世紀ビジョンを具体策に –生物多様性国家戦略

今国会で審議される自然公園法、鳥獣保護法の改正案に「生物の多様性」という言葉が明示されたのには、昨年、環境 省が省に昇格して以来、生物多様性国家戦略を、今後の自然保護行政の指針とすべく、その改訂に取り組んできたという 背景がある。

昨年11月号でもご紹介したように、研究者からなる生物多様性国家戦略懇談会、中央環境審議会に設置した生物多様 性国家戦略小委員会は、NACS-JをはじめとするNGOの意見を聞くとともに、今年3月には新・生物多様性国家戦 略の中間とりまとめ案を公表し国民に意見を求めた。この国民からの意見を踏まえて最終答申が作成され、3月末の関係閣僚会議を経て決定される予定である。

NACS-Jは、3月11日に新・生物多様性国家戦略に対する意見を提出した。

意見では、国家戦略を策定するプロセスの透明性・公開性は評価した上で、各省庁が分担執筆した第4部の具体的施策 の記述の問題点を指摘した。川辺川ダム、諌早湾干拓事業、大規模林道などの20世紀型公共事業を中止せずに、一方で 自然再生型公共事業や環境保全型農林業の推進を唱える国土交通省、農林水産省などを批判し、これらの反省にもとづい た自然環境再生の具体策を求めた。また総論では里地里山の保全を主要課題にあげながら、各論となると各省庁よせ集め の施策の羅列に終始していることを批判し、国が里地里山の保全について具体策を示すよう求めた。

(吉田正人・常務理事)

 

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