川辺川生態系のアユを中心とする「専門家パネル」設置に関する質問
2001(平成13)年11月29日
国土交通大臣 扇 千景 殿
熊本県知事 潮谷 義子 殿
財団法人 日本自然保護協会
理事長 田畑 貞寿
川辺川生態系のアユを中心とする「専門家パネル」設置に関する質問
財団法人 日本自然保護協会(NACS-J)は、熊本県・川辺川の河川生態系の価値を明らかにすべく、昨年9月から、球磨川・川辺川においてアユの体格比較調査を行って参りました。
その結果は、本年3月6日および10月29日に「熊本県球磨川支流・川辺川におけるアユ魚体調査結果に基づく川辺川ダム計画見直しに関する意見書」として報告しています。また、本年10月29日に国土交通大臣、熊本県知事に提出した意見書では、国土交通省・NACS-Jの双方が推薦する研究者で構成する「専門家パネル」を設置し、川辺川産アユの体格・品質の良さと河川環境要因との関係を解明する場作りを提案いたしました。
しかし現在までのところ、国土交通大臣および熊本県知事からは、専門家パネルの設置に関する回答を頂いておりません。
全国に報道されたとおり、11月28日の球磨川漁協臨時総会では、国土交通省が示した16億5千万円の漁業補償案は否決されました。この結果からは、国土交通省が示した川辺川ダム建設における環境保全措置の有効性や重要な漁業・観光資源であるアユへの影響の説明について、球磨川・川辺川の多くの漁民から大きな疑問を持たれていることが明らかです。
具体的には、国土交通省が現在までに行っている環境調査とダム建設後の予測では、(1)アユを含む漁業対象魚種の科学的調査が不十分である、(2)選択取水や清水バイパス等による環境保全措置の効果の証明が不十分である、(3)上記2つの不備が有るのにも係わらず「アユへの影響は小さい」という短絡的な結論が得られていることに集約されると言えます。
この様なことから、川辺川河川生態系の現況と価値および川辺川ダム建設が下流の河川環境に与える影響を公平な立場で再評価することが必要であり、科学的資料をつき合わせて総合的に検討を行う「専門家パネル」の必要性がさらに増したと考えられます。そのためには、漁業権の強制収容を手続きも一旦白紙に戻す必要があると考えます。
国土交通大臣、熊本県知事におかれましては、専門家パネルの設置提案に関し、また本件に関する今後の対応について、早急にご回答を頂きたく、急ぎ本状をお送りするものです。