「原石山を使用しないことは歓迎できるが、 生態系保全のための社会的議論の実現を求む」
川辺川ダム事業における原石山変更の発表へのコメント
平成13年10月9日
NACS-J常務理事・横山隆一
本日(10月9日)、国土交通省は、川辺川ダムの現在の原石山(ダムサイト建設時の原石採掘予定地)を使用しないことを決めた、と発表した。
この原石山は、ダムサイト建設予定地の目前に合流してくる最も近い谷の入り口に位置し、この谷にすみ繁殖に成功しているクマタカペアは、NACS-Jが地域の自然観察指導員と共に、5年前から調査してきたペアである。
今年も産卵と孵化までは順調であったが、残念ながら梅雨の時期に雛は死亡している。
クマタカは、繁殖成功率が各地で低下し、絶滅の危機に瀕するため希少猛禽類といわれているが、この原石山が、このペアの「繁殖テリトリー」であるか否かで対立し、NACS-Jはこれまで、この原石山採掘が行われれば、繁殖活動が不可能になると主張してきた。
『繁殖条件が保たれ、繁殖活動の継続ができるかどうかにあったこの谷のクマタカペアにとっては、今の原石採掘予定地は「繁殖テリトリー」の一部であったため、これの採掘が取りやめになったことは、生息環境と繁殖環境の保全に繋がる良いことであり歓迎すべき判断である。ただし、川辺川ダムと自然保護の関係はクマタカ一種だけの話ではなく、川辺川を生態系として守ることができるかどうかにある。
NACS-Jは現在、この地域の河川生態系の典型性の指標生物である大型アユの調査をしているが、「生態系保全」のための科学的根拠に基づいた社会的議論こそが求められている。その実現を国土交通省には求めたい。』
以上