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特集「エイリアンスピーシーズ」その7 コラム

2000.10.01
解説
会報『自然保護』No.450(2000年10月号)より転載

 

コラム

バス釣りは悪か? バス釣りブームに沸く業界

バスフィッシングが、70年代に次ぐ空前のブームとなっている。書店の釣り雑誌コーナーには信じられないほど多種類の雑誌が並び、インターネット上では釣り場情報を交換するホームページがあふれる。バス釣り人口は何百万人ともいわれ、トーナメントで賞金を稼ぐバスプロと呼ばれるプロの釣り師が1000人を数えるという。コミック雑誌にもかっこいいバスプロの主人公が登場する。子どもたちにとっては憧れの対象だ。

こうした中、バス釣りビジネスを牽引する釣り団体、釣り雑誌は表向き「密放流反対」を右に倣えとでもいうように掲げる。が、いったん密放流されてしまえばバスの釣り場が増えるわけで、結果的に釣り場が増えることには何ら異論がないようだ。

バス釣り推進派が唱えるバス擁護論は一見、実にさまざま。「ライオンがほかの動物を食い尽くしはしないように」バスも餌になる在来魚を食い尽くすことはないという、不思議な生態系理論から、悪いのはバスよりも水辺環境の破壊や水質悪化など別の要因だとする責任転嫁説、バスは生態系に組み込まれやがて安定するという楽観論(その間に絶滅危惧種が食べ尽くされることには言及がない)まで、残念ながら論とは呼びがたい稚拙な言い分が目立つ。

琵琶湖博物館には環境学習のため全国から子どもたちが訪れる。主任学芸員の中井さんは、憧れの琵琶湖にバス用のロッド(釣り竿)を片手にやってきた某県のA市とB町の中学生に、バスを放流したことがあるかどうか聞いてみた。すると、A市の生徒では五人のうち四人までが自分で放流したことがあると答えたが、B町の生徒では六人のうち一人もいなかった。理由は簡単。B町ではバスを放流するまでもなくすでに周囲に十分存在していたのだ。

私は密放流した子どもたちを責める気はありません。バス釣りを楽しんでいる子が、小魚がたくさんいるがバスのいない池を見つけたら、そこを秘密の釣り場にしたいと思うのは当然でしょう。マンガなどでもカッコ良さとか面白さしか伝えないし、すでにかなり広がっている魚なので、ついでにここに居たっていいのではと思うのも無理のないこと。問題なのは、子どもたちに当然のごとくそう思わせてしまう背景にある社会状況で、これを何とかすべきです」

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琵琶湖博物館主任学芸員 中井克樹さん

そのためには駆除活動を含め積極的な社会への普及・啓発事業を広く行っていくことが最も重要だと中井さんは考えている。IUCNのガイドラインで国際的な課題とされる移入種に対する知識の啓蒙は、日本にもまったくあてはまる共通の課題なのだ。

(島口まさの)


コラム

アライグマ問題に学ぶ~情報公開

恵庭市が行ったアライグマ駆除に際して、市が市民への情報公開をどのように行ったかを紹介したい。 1997年、市が初めての駆除に踏み切り、報道取材や動物愛護団体の意見がさらされたとき、恵庭市では広報『えにわ』が移入種問題を特集した。

この、11頁に及ぶ「ラスカルを追え!」と題された特集では、市内でいったい何が起きているかという現状を伝えた上で、動物愛護者と動物生態学者に主張を聞いて論点の違いを対比。農業者や市民の意見も載せている。その上で、なぜこのような状況を人間がつくってしまったのかを「あらいぐまラスカル」の物語を借りてわかりやすく紹介。読者に問題提起した。

この直後に市民が中心になって発足した「広報誌を読む会」第1回のテーマにも、この特集が取り上げられ、活字だけでは伝えきれなかったことが顔をあわせて話し合われた。広報『えにわ』は、この集まりの報告や特集の感想などもていねいにフォローしている。

行政の広報誌というと一方的な通知に終わるものが多い中で、なぜ駆除が必要なのか市民に一緒に考えてもらうよう努めたことは注目に値する。行政の説明責任、移入種問題解決のための地方自治体の役割を考える一例だと思う。

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1997年 自治大臣賞・特選「ラスカルを追え!」

(島口まさの)

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