「水道水の基準値をはるかにこえる高い価のマンガンが検出」
中部空港及び関連埋立事業に伴う幡豆町の土砂採取が自然環境に与える影響に関する見解
NACS-J
監 事 西條八束
常務理事 吉田正人
当協会は、中部空港及び関連埋立事業に伴う幡豆町の土砂採取が自然環境に与える影響に関して、本年6月16日に愛知県知事、建設大臣、運輸大臣、農林水産大臣、環境庁長官に意見書を提出した。その中で、土砂採取が三河湾の沿岸生態系や漁業に与える影響を指摘したが、最近の知見を交え、本日改めて当協会の見解を述べる。
1.愛知県企業庁は地元に対して、「予定地にはマンガンは存在しない」と説明しているが、幡豆の将来を考える会と八木明彦名古屋女子大学教授が、最近実施した水質調査によれば、土砂採取予定地の湧水から、最大で13.7mg/lのマンガンが検出された。この値は、水道水の基準値である 0.05mg/lをはるかにこえる高い価であり、「あってもごく少量」ということはできない(注1)。
今回のような出水が工事中に起これば、マンガンが海に流れ出し、アサリ等に大きな影響が出る可能性も十分に考えられる。愛知県企業庁が予定地の土砂を採取しても安全であると主張するならば、予定地を広くボーリングした上で、マンガンの有無をはっきりと調査すべきである。
2.環境影響評価書では、土砂採取により流出した泥は、沈砂池によって大部分除去できるとしているが、除去できるのは比較的大きな粒子だけであり、出水時にはシルト以下の微細粒子(粒径0.05mm以下)は、大部分上澄みとして、海まで流出してしまうであろう。とくにそのような微細粒子は、アサリ等に致命的な影響を与えることが知られている。幡豆町の保安林を伐採し、大量の土砂を採取すれば、浮遊固形物質が海に流れ込み、アサリ漁、ノリ養殖がさかんな日本有数の豊かな漁場である三河湾の生態系に影響を与えるおそれがきわめて高い。
(注1)マンガンはその存在状態を、水質環境(特に酸素の有無)によって、溶存態・懸濁態と容易に変える化学物質である。海域・処理池内での沈殿物も、貧酸素状態では容易に水中に流出してくる。したがって、水中の全マンガン量を量的に把握することが重要である。マンガンの毒性については、比較的に少ないとされているが、実際には、14mg/lの濃度でも地下水の飲水による死亡の報告(1940年)もある。また食物連鎖による生物濃縮にも十分考慮する必要がある。