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森の改変は100分の1以下に

2000.09.01
活動報告

No.449(2000年9月号)より転載


 

海上の森での万博に愛知万博検討会議が出した結論

7月24日、第8回愛知万博検討会議が名古屋市で開かれ、海上の森(かいしよのもり)における博覧会事業について、森の中の建物は0.5ha、道路は森の入り口まででその先は園路とする案をまとめた。

000901森の改変変遷.jpg最終案と、付けられた条件

第7回会議(7月17日)で博覧会協会から出された案は、「海上南地区への環境負荷を最小限にとどめるため、施設はできる限り西地区に建設する」という委員長試案の精神を逸脱するとして差し戻しとなった。

そのため、検討会議に参加している博覧会協会委員が中心になり、1週間で書き直したのが24日の最終案だった。24日に合意できなければ、12月登録は見送るという、背水の陣を敷いたギリギリの案であった。

24日に検討された案は、(1)南地区への影響を低減するため、西地区に仮設施設を集中する。西地区東側の県有地に、万博後も森の文化館として使える施設(0.5ha)をつくる。(2)南地区は、最初の尾根上を造成せずに、将来も森の自然館として使える施設(0.5ha)をつくる。(3)南地区から吉田川を渡って北側に至る回廊をつくり、その終点に将来生物多様性研究センターとして使える施設(0.35ha)をつくる、というものだった。

この案に対して、私が「南地区の施設の工事・管理用道路をなくすべきだ」、森山昭雄委員が「回廊はぜい弱な貧栄養湿地を通るので変更を」と求めた。その結果、「青少年公園と海上の森をつなぐ道路は森の入り口まででそこから先は園路とする」「回廊は影響の少ない尾根上にする」と変更され、ほとんどの委員の賛成で海上の森の会場計画案が採択された。

なおこの案は、海上の森の利用の最大限を示したもので、財政的に無理であれば、縮小はあっても拡大することはない。また、設計.施工などの各段階を検討委員が監視しフィードバックする。地元住民に説明を行い合意が得られなければさらに変更するなど、いくつもの条件がついている。

当初の、150haの住宅開発、80ha以上を万博に利用しようという案に比べると、森の改変は100分の1以下に抑えられた。すでに4月に休止が決まった都市計画道路ばかりでなく、県道が森に入りこむことも防いだ。

会員の皆さんにも、あくまでも「万博ゼロ」「海上の森ゼロ」を目標とすべきだという意見もあり、これでも不十分と評価されるかもしれないが、青少年公園と海上の森を会場とする条件の中では、ベストに近い成果をあげることができたと思っている。

そしてもう1つの成果は、愛知万博検討会議という市民参加の検討の場が実現したことである。長野五輪自然保護検討会議をモデルにするため、当時の委員・今井信五さん(NACS-J会員)を招いて勉強会を開くなどしてつくってきた会議だが、委員長の選挙、会議の傍聴、インターネットでの同時中継など、長野五輪の会議を超えた市民参加の会議になった。今後の、公共事業における市民参加の合意形成づくりに、大きな影響を与えることと思う。

ただし、会議の時間的な制約は大きく、1週間に1回という高い頻度で開かれはしたが、話したりない点は多かった。海上の森の長期的な保全策など残された課題は、近く愛知県が開く予定になっている、海上の森の万博後の保全と利用を考える会議に引き継がれることとなろう。

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