「クマタカの子育て 砕石範囲縮小で守れるか?」
会報『自然保護』No.449(2000年9月号)より転載
利水の必要性や漁業権・税金の使途のあり方など多くの問題をはらむ熊本県・球磨川支流の川辺川ダム計画について、自然の問題が再度クローズアップされつつある。
7月には、新たに県知事となった潮谷知事から建設省(九州地方建設局)に、クマタカの繁殖環境の保護を中心とする要請が出された。このクマタカペアの暮らしについては、NACS-Jも県内の会員の方と共に直接調査し、昨年に続き今年も無事に子育ての成功を確認している。
またNACS-Jでは、クマタカ環境だけでなく上流部にある洞窟を水没させてしまうことにも問題を感じている。クマタカとダム計画については、ダムサイト建設用の岩石を採取する山がこのクマタカの繁殖環境として重要な役割を果たしていることがわかっているが、九州地方建設局は砕石範囲の縮小で問題は回避できると知事に答えたという。
知事の要望書では、NACS-Jに十分な説明をすることも要望していただけたということなので、双方の調査結果の付き合わせもなされることになるだろう(なお、経緯の理解には、熊本日日新聞のホームページがとても参考になる)。守るべきものは希少種とされているクマタカだけでなく、このような生態的な位置にいる生物もくらし続ける清流環境にある。
NACS-Jでは、9月には、自然保護寄付を集めて専門家を派遣することも検討している。九州にお住まいの会員・自然観察指導員の方々のご協力をお願いしたい。
(横山隆一・常務理事)