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「吉野川第十堰(徳島県)、川辺川ダム(熊本県)、清津川ダム(新潟県)には、抜本的な見直しを」

2000.08.24
要望・声明

2000年8月24日
(財)日本自然保護協会
常務理事 吉田正人

8月24日、日本自然保護協会(理事長、田畑貞寿)は、自民党政務調査会公共事業抜本見直し検討会(座長、谷津義男)にあてて、「自然環境保全の見地から見た公共事業の見直しの要望書」を提出しました。

この中で、当協会はとくに、吉野川第十堰(徳島県)、川辺川ダム(熊本県)、清津川ダム(新潟県)の3つをあげて、事業の必要性や住民合意などの視点からだけでなく、自然環境保全上の見地からも事業を見直すことを要望しました。

吉野川第十堰

徳島県の吉野川の河口14kmに位置する第十堰をとりこわし、1.2km下流に可動堰を建設する計画。吉野川第十堰建設事業審議委員会は、1998年に可動堰建設を妥当とする結論を出したが、2000年1月に実施された徳島市の住民投票では、投票者の約90%が可動堰建設に反対の意志を表明した。日本自然保護協会は、1999年に吉野川第十堰問題小委員会を設置し、可動堰が建設による、水質や底質の悪化、第十堰周辺の生物、河口干潟の生物への影響などを予測した報告書を発表した。

川辺川ダム

熊本県の球磨川水系の川辺川に計画されている高さ107.5m、総貯水量13300万トンのアーチ式コンクリートダム。川辺川ダム事業審議委員会は1996年に計画は妥当とする答申を出したが、ダム予定地の近くにクマタカの営巣地があることを報告していなかったことが問題となった。1999年には、日本自然保護協会と熊本県クマタカ研究グループの協力により、ダム予定地のクマタカは原石山周辺を繁殖テリトリーとしていることが、明らかとなった。

清津川ダム

新潟県の信濃川水系の清津川に計画されている高さ150m、総貯水容量17000万トンの重力式コンクリートダム。昭和40年代に計画されたが、地元の合意が得られず計画がとまっていた。1997年に地元協議会が調査実施を受け入れ、調査に入ったが、日本自然保護協会自然観察指導員、地元野鳥の会会員などによって、イヌワシ、クマタカの生息が確認され、現在調査が続けられている。

 


要望書全文

平成12年8月24日

自由民主党政務調査会公共事業抜本見直し検討会
座長 谷津 義男 殿

(財)日本自然保護協会
理事長 田畑 貞寿

自然環境保全の見地からみた公共事業の見直しに関する要望書

日頃、自然環境の保全にご尽力を賜り深謝申し上げます。

さて、貴検討委員会では、事業の必要性、住民合意などの見地から、公共事業の見直しを検討され、近くその報告を発表されることと聞いております。 建設省所管の下記事業につきましては、自然環境保全の見地からも、大きな問題があるため、それを含めて抜本的な見直しをされるよう要望いたします。

 

1.吉野川第十堰(徳島県)

可動堰の建設は、堰上流の水質の悪化、堰上流の河床低下によるアユ産卵場の喪失、原堰周辺の地形改変による植物・底生生物・魚類等への影響、堰下流の底質の悪化とシジミ等への影響、河口域の干潟と生物への影響など、さまざまな環境への影響をもたらすことが懸念されています。
可動堰の河川生態系への影響は、利根川河口堰、長良川河口堰などのモニタリング調査からも明らかになっており、吉野川においては同じ轍をふむことなく、可動堰によらない治水対策を検討すべきであると考えます。

2.川辺川ダム(熊本県)

川辺川ダム湛水域周辺には、7つがいのクマタカ(種の保存法政令指定種)が生息しており、そのうち最も繁殖成績の良い1つがいがダム原石山を主な狩場としています。また湛水域上端には、九折瀬洞(つづらせどう)と呼ばれる洞窟があり、ツヅラセメクラチビゴミムシ、イツキメナシナミハグモなどの固有種が生息しています。さらに川辺川は、ダムのある本流の球磨川に比べ、良好なアユの生息環境を維持しています。 川辺川ダム建設は、これらの自然環境に重大な影響を与えることは明らかです。建設省は調査を実施してはいますが、環境アセスメントは実施されていません。ダム建設の必要性の検討とあわせて、自然環境保全の見地からも見直すべき事業であると考えます。

3.清津川ダム(新潟県)

清津川ダム湛水域は、イヌワシおよびクマタカ(いづれも種の保存法政令指定種)の繁殖地となっています。建設省は調査を実施していますが、ダム建設が猛禽類に与える影響についてはまだ評価できていません。本州における猛禽類の連続的な分布を維持するには、南魚沼地域の地域個体群は非常に重要です。ダム建設の必要性の検討とあわせて、自然環境保全の見地からも見直すべき事業であると考えます。

 
*要望書には別途、詳細資料を添付しました。

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