河口堰問題小委員会、報告書を発表
No.448(2000年7・8月号)より転載
環境回復のための措置をとるべきである」
長良川河口堰のゲートが閉め切られてから7月6日で5年になる。
日本自然保護協会(NACS-J)は、河口堰運用後の影響を調査した結果を昨年7月に「長良川河口堰が自然環境に与えた影響調査報告書」にまとめた。昨年10月からは、保護委員会のもとに、河口堰問題小委員会を設置し、利根川、長良川、吉野川という日本を代表する河川に建設あるいは計画された河口堰に対する提言をまとめた。
小委員会は、田中豊穂中京大学教授を委員長に、長良川、利根川の河口堰のモニタリング調査や、吉野川第十堰の環境調査にかかわってきた研究者で構成されている。2月29日には、長良川河口堰に関して、水質、底質、生物など、各分野ごとに、堰運用前の予測との比較、建設省と民間団体のモニタリング調査結果の比較を行った結果と、今後のモニタリング調査への提言を中間報告書として建設省中部地方建設局長に提出した。
最終報告書では、長良川河口堰だけでなく、利根川河口堰、芦田川河口堰など全国の河口堰における調査結果を比較して、河口堰が汽水域の河川生態系に与える影響モデルを提案した。また長良川河口堰、利根川河口堰の運用、吉野川第十堰の影響調査への提言もまとめた。
最終報告書によれば、汽水域に河口堰が建設されると、堰上流域の止水化によって浮遊藻類の発生などの湛水域の湖沼化が進行する。堰下流部では、有機物を多く含んだ、貧酸素の底泥が堆積し、ヤマトシジミが生息できなくなる。またゲートの閉鎖によって、サツキマス、アユなどの回遊魚の、遡上の遅れ、遡上数の減少などの影響が出ている。建設省は、堰上流部での影響は堰との因果関係を含めて認めているが、堰下流部の影響や、ゲート閉鎖による回遊魚への影響については、堰との因果関係を認めていない。
小委員会の提言では、長良川河口堰は開放することが望ましいが、水質など影響を認めている部分からでも、環境回復のための措置をとるべきであると結んでいる。また吉野川第十堰に関しては、まず現堰が作り出している環境の評価を行うべきだと提言している。
(吉田正人・保護研究部保護担当部長)