「会場案は検討中なので見守っていてほしい」
NACS-J、WWF-J、日本野鳥の会、3団体の会長が通産大臣と会談
3月27日、愛知万博の会場建設問題に関して、NACS-J、WWF-J、日本野鳥の会3団体の会長と深谷隆司通産大臣との初の会談が行われました。17日(金曜日)には愛知県知事との会談が行われましたが、大臣との会談は過去に2回予定されていたものの、国会等のスケジュールの関係で流れており、ようやく実現の運びとなったものです。
←3団体の会長と神田愛知県知事
会談は通産省の大臣執務室で17:40から約30分行われ、東京、愛知から約50人の報道陣が詰め掛けました。会談には、NGO側からは、NACS-J会長・沼田眞、WWF-J会長・大内照之氏、日本野鳥の会会長・黒田長久氏、同副会長・岩垂寿喜男氏が列席しました。
会談後に大臣は、「3団体それぞれからそのお考えをうかがった。こちらからはBIEへ派遣したときの状況などをご説明し、現在神田知事(愛知県)と12月の万博の登録までにきちんとした計画を発表できるよう検討中であることなどをお伝えした。万博を成功させることではNGOの方々とも思いは共通で、多くの人が現在検討中なので見守っていてほしいともお伝えした。会場案の見直し等の具体的なお話は今日はしていない。が、ご希望をすべて入れ込むのは無理で、参考にさせていただいてどうすべきかを考えることになる」とコメントしました。
←会談後にコメントする深谷大臣
3団体の理解は得られたかという記者からの質問には「今は計画案を検討中なので具体的なお話はしていない。ただ、世界に対して、自然とのふれあいを伝えていきたい。知事との会談の話を聞いていたので、意味のある会談だった。跡地利用は愛知県の問題なので、県からどういう提案が出てくるか。それをまた検討していきたい」との回答でした。
その後3団体の代表の記者会見が、通産省記者クラブで行われました。日本野鳥の会の岩垂寿喜男副会長が、先日の知事との会談と同じように「我々側は昨年提出した3つの意見を再度お伝えした(詳細はこちら)。自然を残すことを(IUCNなどの)国際団体に伝えたところ、BIEとその団体との意見が一致したと思えるので、大臣との会談が実現した」と説明しました。
続いて日本野鳥の会・黒田会長からは、「鳥と自然とがうまくいった形での万博が成功するように、そして保存事業として自然を壊さない形での万博を望んでいる」、WWF-J大内会長からは「外国では、日本人は経済優先で環境のことには真剣みが足りないと思われている。『環境万博にする』という良い決定があったのだから、先日の知事の発言にもあったように『過去にとらわれず』検討してほしい」と述べました。
←3団体代表の記者会見
またNACS-J沼田会長からは、「海上の森は人の暮らしと森とが良い関係を持っている。博物館の展示とは違い、フィールドミュージアムとして現存している。外国人が、本などではなく実際に日本の自然を楽しめるところだ。万博の後に『Satoyama Park』という言葉が英語として広がるのではないか」と、各団体から大臣に伝えた話の説明がありました。そして岩垂氏から、「今日はいわば『お見合い』をした。今後は互いに努力しあうのだが、条件が合わなければ結婚にはいたらない。胸襟を開いた話し合いを努力していきたい。NGOとの協調が万博成功への道だ。(11月のIUCN総会が開かれる)ヨルダンでわれわれ3団体が万博に対してNOと言ったら、万博への出展を控えるところが多くなるだろう」と締めくくりました。
先日の会談もこの日の会談でも、会場案の中身についての具体的な意見交換はなされていません。ただいずれの会談でも、会場計画は「県が鋭意検討中」とされており、その中に、昨年8月に自然保護サイドから提出した要望がどの程度盛り込まれるかがポイントになります。これまで各地の自然保護問題の現場では、短時間の住民説明会を開いただけで「住民の意見を盛り込んだ」という既成事実にしてしまう事例が多々見られました。しかし今回のケースは、BIEから「日本国内の自然保護団体の理解を得ること」が求められていますので、万博の実現にはより突っ込んだ中身の議論が不可欠です。
さらにIUCN総会で総会決議がなされるかどうかは、NGO側にイニシアチブがあるのですから、今回のような中身に踏み込まない会談だけでは意味をなしえず、NGOが納得する博覧会計画になるかどうかにかかっています。今後、県と通産省から、どのような提案がなされるかが注目されます。