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レストレーション(自然復元)①~3つのタイプ~
(やさしくわかる自然保護17)

2000.03.27
解説

月刊『自然保護』No.441(1999年11月号)に掲載された、村杉事務局長による自然保護に関する基礎知識の解説を転載しました。
自然保護に関する考え方や概念それに用語など、基礎的なデータベースとしてご活用ください。各情報は発表当時のままのため、人名の肩書き等が現在とは異なる場合があります。
やさしくわかる自然保護 もくじ


レストレーション(自然復元)① ~3つのタイプ~

今までに解説してきたプリザベーションやコンサベーションといった「自然保護」は、いずれも現存する自然の生態系を保護することを目的にした行為であるのに対して、今回と次回で述べるレストレーション(自然復元)は、自然環境が悪化したり、消失してしまったところを、人間が手を加えて再び健全な自然の状態に戻そうとする行為をいう。

一口に「自然を復元する」といっても、対象となるのがどんな所で、自然の劣化や破壊が起こった原因は何なのか、そしてそこを将来どのような自然環境にしたいのかで具体的な方策はさまざま、十人十色ならぬ十カ所十色である。中村俊彦氏はこの自然復元を修復型・再現型・創出型の3つに整理している。※1

「修復型」とは、踏みつけなど人為的な影響で自然が劣化した湿原とか、人的管理を放棄したために植物の遷移が進行して変質した雑木林や人工林、生活排水の流入で富栄養化した湖沼などを人間が手を加えて元の状態に戻そうとする行為をいう。人為的な影響で環境が悪化している場合は、影響を及ぼしている原因を取り除けば自然は回復するわけだが、それはあくまで症状が軽い場合に限られる。人間の怪我や病気と同様に症状が重くなれば、もはやそれだけでは回復できない。実際に、復元対象のところはどこも重病か危篤状態だ。インパクトの排除に続いて手厚い治療が必要となる。

古くからこの種の復元作業に取り組んでいる所に尾瀬がある。日本自然保護協会の前身である「尾瀬保存期成同盟」の活躍で、尾瀬ケ原が水没から免れたことはすでに書いたが、そのころから尾瀬は新たな環境破壊に見舞われることになった。

尾瀬が素晴らしい所だ、と知った人々が木道の整備が不十分な湿原に押し寄せたからたまらない(昭和30年代の年間の来訪者は約10万人)※2、たった数年で湿原のあちこちで乾燥化・裸地化が目立つようになってしまった。

先月号の「自然保護」に詳しく記されているように、尾瀬のアヤメ平で手探りの復元が始められたのは昭和41年、以来30年以上たった今でも、移植や播種による復元作業は熱心に続けられているが、まだまだ回復は不十分だ。一度失われた自然を取り戻すには膨大な時間とエネルギーがいることがよくわかる。

「再現型」とは、一度自然が完全に破壊された後の場所に、その土地本来の自然の再現を目ざす行為をいう。過去には田畑に土地本来の極相林を再現しようとした東京の明治神宮のような例もあるが、最近では多自然型川づくりと称して、コンクリート3面張りの川を自然豊かな元の川に戻す事業、ビオトープ※づくりと称して都市公園にかつての里やま景観を再現する事業などもこの範疇にはいる。このような場所は土地基盤の整備とともに、植栽など他所から意図的に生物を導入することも多い。

「創出型」は、神戸のポートアイランドのような人工島に森をつくる場合のように、本来の自然の状態にとらわれず、新しい自然をつくり出すことを意味する。植物園につくられたロックガーデンやビルの屋上のビオトープなども、小規模ながら一応このタイプといってよい。

※ビオトープ:ドイツ語のBiotopの日本語読みで「野生生物が自立的に存続できるような生態系からなる地域空間」を意味する。

(村杉幸子・NACS-J事務局長)

<参考文献>
※1 中村俊彦「自然復元の景相生態学:」沼田眞編『景相生態学』朝倉書店(1996)
※2 菊地啓慶四郎・須藤志成幸「永遠の尾瀬」上毛新聞社(1991)

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