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新石垣空港建設予定の4候補地の問題点を整理 / 問題点一覧表

2000.02.14
要望・声明

新石垣空港建設位置選定委員会に向け、資料公表


2000年2月14日

新石垣空港建設位置選定委員会
委員長 東江 康治 様

委員各位

財団法人日本自然保護協会
普及部長 中井 達郎

拝啓 日頃より自然環境保全のため、ご尽力をいただき、誠にありがとうございます。

さて、新石垣空港建設問題につきまして、ご承知のように、当協会は、白保サンゴ礁上での新空港建設案が本格化した1985年ころの時点から、この問題について注目し、地元団体あるいはWWF-Jなどとの協力のもと、自然環境保全上の立場から、国際自然保護連合(IUCN)による2度にわたる調査への協力や独自の科学的検討・調査に基づく意見具申などを行ってきました。

「カラ岳東案」が提示された時点では1989年5月に緊急調査を行い、この海域のサンゴ礁生態系の評価を行った上で、同案に対する反対の意志表示を行ったものであります。また、大田県政での候補地選定作業に際しても、上記の緊急調査および追加調査に基づく意見具申を行ってまいりました。

稲嶺知事のご判断に基づく「新石垣空港建設位置決定委員会」でのご議論にも注目してきたところですが、昨年11月4日には、沖縄県土木建築部新石垣室長に、カラ岳東案について自然環境保全上の立場からの危惧を表明いたしました。またその際に、他の3候補地についても、自然環境保全上の課題を検討する旨お伝えいたしました。

今回第5回の「新石垣空港建設位置決定委員会」で「環境」の問題が取り扱われると伺い、ご議論の参考にしていただきたく資料を作成いたしました。委員会で各委員にご配布いただき、材料にしていただければ幸いです。

今後新空港建設事業を進める中で、1999年に新たに施行されました「環境影響評価法」に基づく環境アセスメントの実施をされることと思います。この制度では、環境庁をはじめ、全国の一般市民からの意見を求める機会が用意されています。また、内容的にも生態系を含む「生物の多様性の確保」、「人と自然との豊かなふれあい」といった大変重要な項目が付け加わっております。

当協会は、八重山の方々が、世界にも誇るべきその自然を損なうことない賢明な利用を行って、豊かな暮らしを続けられることを切に願うものです。自然環境保全の問題はこれからの地域づくりにとって、欠かせない課題となっています。十分なご検討と賢明なご判断を期待しております。

敬具


<資料>

新石垣空港建設に関する自然環境保全上の課題について

2000年2月

(財)日本自然保護協会

沖縄県の作成資料および当協会の独自資料から、新石垣空港建設をめぐる自然環境保全上の課題について別添の表を作成した。その結果以下のことが指摘される。

  1. 4候補地ともそれぞれに、自然環境保全上 十分な考慮・検討を要する課題が、多大で ある。特に「カラ岳陸上」、「カラ岳東」、「富崎野」の各案は課題が多い。
  2. 健全な生態系を維持しているサンゴ礁に接している。この白保サンゴ礁をはじめとする東海岸のサンゴ礁生態系については、国際自然保護連合(IUCN)、(財)日本自然保護協会、(財)世界自然保護基金日本委員会をはじめさまざまな団体、個人が、国民、地域の財産として保護する必要を訴えている。国立公園指定の声もある。また沖縄県は『自然環境の保全に関する指針』(平成10年)で、宮良川河口以北の東海岸全域を「自然環境の厳正な保護を図る地域(評価ランクI)」という保護の必要性が最も高いランクに区分している。海域生態系の保護では、陸上(集水域)の保護・保全を一体として考慮することが大前提であり、特に赤土流出問題がいまだ大きな課題となっている当該地域では、非常に重要な点である。沖縄県が作成した『沖縄県環境管理計画』(平成6年)には、赤土等流出防止についての諸施策としてまず1番目に「土地利用適正化への誘導」(「地形が険しい区域における開発等の抑制」「自然特性に合った開発等実施への誘導」)が挙げられている。したがって「カラ岳陸上」、「カラ岳東」の2案については、石垣島東海岸の健全なサンゴ礁生態系の保護・保全の枠組みの中で検討される必要がある。
    なお、「宮良」案の場合も宮良川、轟川の流域にあたり、赤土流出による石垣島東海岸の健全なサンゴ礁生態系への悪影響が十分に考慮されるべきである。
  3. 「富崎野」案については、鳥類の生息地として重要な「アンパル」との関係を十分に考慮する必要がある。「アンパル」はラムサール条約の登録湿地への指定に向けた意見もある。
  4. 自然環境保全上の影響を議論する上で、基本的なデータが不足している。特に「カラ岳陸上」、「富崎野」両案については調査不足である。埋め立て土砂採取地の情報(カラ岳陸上案)、空港施設工事(進入灯など)に伴う影響、空港運用に伴う影響などの情報が不足している。したがって、別添表の各項目については不明点も多い。

以下に表の中の各要件について、詳細を述べる。

1.建設工事に伴う影響

(1) 空港本体工事に伴う影響

A.直接的影響

  1. 地形改変
    • 4案とも土工量が大きく、水の流れや 微気象の変化が危惧される。
    • カラ岳東」「富崎野」案は海域の地形変化も伴う。
  2. 植生改変
    • 「カラ岳東」、「カラ岳陸上」の両案は、海岸植生の破壊を伴う。東海岸のサンゴ礁の健全さを保つ上で、海岸林が果たす役割を指摘する意見もある。
    • 「カラ岳東」案は、海域の藻場の破壊を伴う。藻場は魚類などの繁殖・生長にとって大変に重要な場である。
    • 「富崎野」案は、鳥類の生息環境としての林に変化が生じる。
  3. 動物の生息場の変化
    • 「カラ岳東」案は、サンゴ礁の一部を埋め立てることにより、造礁サンゴ群集を破壊し、かつそこに生息する生物の生息場を失う。
  4. 景観変化
    • 土工量が大きいためいずれの案も大きな景観変化を伴う。
    • 「カラ岳陸上」、「富崎野」両案では、滑走路先端で海面から25mおよび45mの擁壁が出現することになる。特に「カラ岳東」案では、もともと傾斜の緩い海岸線であるため特異な景観となり、観光利用面でのマイナスともなる(25mは、ほぼ5~6階建てのビルの高さにあたる)。
  5. 地下水の分断
    • 「カラ岳東」、「カラ岳陸上」の両案は、海岸線付近の地形改変を伴うため、海域に流入する地下水の量や流れ方が変化する。その結果藻場等サンゴ礁生態系に影響が出る可能性がある。
  6. 埋立土砂採取場の影響
    • 「カラ岳陸上」案では、空港建設地とは別の場所からの土砂採取が必要となる。その土砂採取現場についても地形変化、植生変化、動物の生息場の変化、景観の変化などが明らかにされ、議論する必要がある。

B.間接的影響

  1. 赤土流出
    • いずれの候補地も土工量が大きく、赤土流出とそれに伴うサンゴ礁生態系への悪影響が懸念される。
    • 特に「富崎野」案では45m、「カラ岳陸上」案では25mの高さの埋め立てが必要となり、かつそれがサンゴ礁海域に隣接をしている。沖縄県は、過去の工事の実績(例えば久米島空港)から、赤土流出対策が可能であるとしているが、この実績と今回のケースでは規模や形態が異なり、単純な比較は困難である。
    • なお、環境基本法に基づき沖縄県が作成した『沖縄県環境管理計画』(平成6年)では、赤土等流出防止についての諸施策としてまず1番目に「土地利用適正化への誘導」(「地形が険しい区域における開発等の抑制」 「自然特性に合った開発等実施への誘導」)が挙げられている。
  2. 海水流動パターンの変化および海底堆積物による濁り
    • 「カラ岳東」案では、この変化がサンゴ礁生態系全体に悪影響がおよぶ。

(2) 空港施設工事に伴う影響(進入灯など)

この要件については全く情報がないが、上記の空港本体工事に伴う影響と同様に検討する必要がある。進入灯については、「カラ岳東」、「カラ岳陸上」、「富崎野」の各案では、海域での建設も考えられる。

2.空港運用に伴う影響

(1) 鳥類の移動への悪影響

「富崎野」案では、飛行コースと鳥類の渡りのコースが交わることが予想される。鳥類の生息への影響のみならず、航空機の運航上の安全性も危惧される。

(2) 空港からの排水

空港の滑走路からは、大量の雨水とそれに混入する航空機関系の廃液が排出されることが考えられる。海水の塩分の急激な低下や、海水への廃液の流入がサンゴ礁生態系に悪影響を及ぼすことが危惧される。

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