「根本的な見直し、国営公園案の検討を」 「IUCN総会への決議案提出も」
愛知県知事 神田真秋 殿
(財)日本野鳥の会 会長 黒田長久
(財)世界自然保護基金日本委員会 会長 大内照之
2005年日本国際博覧会の開催が予定されている、愛知県瀬戸市海上の森の保全に関して、(財)日本自然保護協会、(財)日本野鳥の会、(財)世界自然保護基金日本委員会の3団体は、新住宅市街地開発事業・都市計画道路を中止し、その自然環境と共に生きてきた先人の歴史をふりかえって、海上の森を国営公園として保全し、将来にわたってこの自然を守り育てることを改めて決意し、本日ここに以下のように申し入れます。
- 新住宅市街地開発事業ならびに都市計画道路の建設は、海上の森の豊かな自然にとりかえしのつかないダメージをあたえるものであり、単なる面積や住宅規模の縮小案では、問題解決にならない。BIEに指摘を受けたのを機会に、根本的な見直しを行うべきである。
- すでに3団体は、昨年の8月31日にこれに対する代替案として、海上の森を国営公園として保全するという案を県知事あてに提案しているが、現在にいたるまでこの提案に対する知事からの回答を得ていない。跡地利用計画を再検討するのであれば、国営公園案について真剣に検討すべきである。
- 世界の期待する環境に配慮した国際博覧会が行われないような危惧が残る場合は、3団体の意志を国際社会に明確に伝えるため、10月にヨルダンで開催されるIUCN総会(第2回世界自然保護会議)に決議案を提出する予定である。
資料1. IUCN(国際自然保護連合)とは?
IUCN-The World Conservation Union(国際自然保護連合)は、1948年にパリのフォンテーヌブローで設立された、民間の自然保護団体と、政府および自然保護に関する政府機関の連合体です。これまで、生物多様性の保全と、自然資源の持続的な利用を目標として、これまでレッドデータブックの発行、世界環境保全戦略の立案、ラムサール条約・ワシントン条約・世界遺産条約・生物多様性条約の推進などにかかわってきました。
IUCNは、次のような組織からなっています
■会長 - ヨランダ・カカバゼ(エクアドル環境大臣)
■副会長- 堂本暁子(日本国参議院議員)
■事務局長- マリッタ・コクベイザー(元世界銀行役員)
■会員
* 国家会員 74 (米国、英国、中国、日本など)
* 政府機関 105 (米国環境保護庁、日本国環境庁など)
* NGO 700 (WWFインターナショナル 、バードライフインターナショナル、グリーンピース、シェラクラブ等)
■委員会
* 世界保護地域委員会(WCPA) 委員長 A.フィリップス(英国田園地域委員会元委員長)
* 種の保存委員会(SSC) 委員長 D.ブラケット(カナダ野生生物局)
* 環境教育コミュニケーション委員会(CEC)
* 環境法委員会(CEL)
* 生態系管理委員会(CEM)
* 環境経済政策委員会(CEEP)
以上の6つの委員会に所属する専門家は全世界で約8000人
■事務局- 本部:スイス・グラン
このほか世界の40地域に地域事務所を持ち職員数は820人
■日本では 日本政府、環境庁および17のNGO(世界自然保護基金日本委員会、日本野鳥の会、日本自然保護協会など)が会員となっています。日本委員会の委員長は、現在交代の途中のため不在ですが、事務局は日本自然保護協会においています。
資料2.世界自然保護会議(IUCN総会)大会決議とは?
IUCNは、1948年にパリのフォンテーヌブローで第1回総会を開いて以来、約3年ごとに総会(General Assembly)を開いている。1997年にカナダのモントリオールで開かれた第21回総会からは、世界自然保護会議(World Conservation Congress)と名称を変えて、生物種の保存、生態系の保全、国立公園と保護地域、環境教育、環境経済、環境政策、国際法など、さまざまな自然保護問題を話し合ってきた。会議におけるディベートの結果は、大会決議(Resolution and Recommendation)という形で発表される。
■第2回世界自然保護会議(第22回IUCN総会)
2000年10月4日から11日まで、ヨルダンの首都、アンマンにおいて開催される。IUCNの国家会員、政府機関会員、NGO会員のほか、世界保護地域委員会などの専門家委員、ユネスコ、国連環境計画、世界銀行などの国際機関の代表など、約2000人が参加する会議となる予定。開会式には、ヨルダンのアブドラ王およびIUCNのパトロンでもありバードライフインターナショナルの総裁でもあるノア女王も出席が予定されている。
■世界自然保護会議(IUCN総会)大会決議
これまで日本に関係したIUCN総会大会決議としては、以下の例がある。
*第18回総会(コスタリカ 1988) 白保サンゴ礁の保護(空港建設問題)
*第19回総会(オーストラリア 1990) 白保サンゴ礁の保護(空港建設問題)
*第20回総会(アルゼンチン 1994) 商業捕鯨、南極海クジラサンクチュアリ 、カカドゥ国立公園ウラニウム採掘
*第21回総会(モントリオール 1997) アマミノクロウサギ(ゴルフ場問題)
世界自然保護会議における大会決議の採択は、コンセンサスまたは投票によって採否を決定する。投票になった場合、政府は2票、NGOは1票を有しているが、合計票数は、圧倒的にNGOが多い。
大会決議が採択された場合、IUCN は決議をフォローアップするために、関係国政府・政府機関に事態の改善を求める書簡を送付する。これまでの例では、白保サンゴ礁に関して、大会決議にもとづき、IUCNから書簡が届き、二度にわたって空港の位置が変更された。第2回世界自然保護会議には、2006年冬季オリンピック(スロバキア)に関する決議案も提出される予定。なお国内的な保護問題の決議案の提出期限は2月15日となっている。