全データが出そろった 猛禽類保全の指針が打ち出せるか
前回までに提供されていた資料は、水公団が推定したダムサイト周辺のイヌワシやクマタカの行動範囲をまとめた図面類でしたが、今回追加されたのは、ダム周辺ですでに実施中の付帯工事や調査結果をまとめるために使用したデータを項目ごとに抜きだした情報です。これで、公団が作成した今回の一連の検討作業に必要な情報はすべてそろいました。
今回の検討作業参加者は、公団側から環境室、現地事務所、調査を実際に行ったコンサルタント会社の7人、NACS-J側からは前回に引き続き日本イヌワシ研究会事務局長・山崎亨氏、同・井上剛彦氏(お二人とも、同時にクマタカ生態研究グループの主宰者で、NACS-Jから検討委員を委嘱しました)、NACS-J総務部長・横山隆一とこの事業の広報を担当する同編集広報部・森本言也の4人となりました。
前回と同じように滋賀県で実施した検討会は、午後3時開始。全体の資料整理から始まり、続いてNACS-J側で今回の方針の確認、どの点に着目すべきかなどの打ち合わせを行いました。その後、今回の追加資料について公団側から説明を受け、それに対して不明な点などを細かく質問しました。そしてそれらをもとに、NACS-J側だけで報告書類全体に関わる検討会議を実施しました。前回の検討会の際に注目すべき点等を上げておきましたので、それに照らし合わせ、資料の全体構成から個々のデータまで詳細に検討し、膨大な資料からどんなことがわかるか、注目すべき点はどこか、マスキング(自然保護上、非公開とすること)すべきなのはどの部分か、などに関する議論を重ねました。この日の段階での検討を終え、作業内容をまとめ、今後の方針の確認等の作業が終了したのが夜11時。翌3日は資料整理、図面の照らし合わせ等を行い、今回の検討作業は終了しました。
NACS-Jは前回と今回を含む3~4回の検討会議によって公表用資料をとりまとめ、11月末をめどに公団側に提供する予定です。その時点で、これらの資料をNACS-Jとしてはどう読むかを公開資料の添付文書とします。従ってこれから約1カ月、もっとも重要な作業が続きます。徳山ダム建設予定地は、イヌワシの生息地であると共に密集したクマタカの生息地でもあります。NACS-Jでは、今回の検討作業から、このような条件の中での猛禽類の調べ方、データの解析方法など猛禽類の調査結果を点検する際の指針が打ち出せないかとも考えています。そしてこの作業の成果が、全国各地の猛禽類とその生息地を守ることにつながることを目指しています。今後の情報は、随時メディアを通して発表していきますので、ぜひご注目ください。
(森本言也・編集広報部)