特集「長良川が教えてくれたこと」(その3)
長良川河口堰5年間のモニタリング調査から
1999年7/8月号より転載
5年間の調査を支えてきたもの
見直しを強く訴えてきたのに聞き入れられずに事業がすすむ―がっかりしてそれっきりになってしまいそうなところだが、地元の市民も、研究者も、 NACS-Jも、誰もあきらめず、忘れることなく、事業のゆくえを見つづけてきた。愚かな自然破壊を繰り返すのではなく、今からでも改善できることのために、そしてそこから学んだことを今後に生かすために、モニタリング(継続監視)は必要不可欠だ。
長良川での5年以上にわたる調査を支えてきたのは、長良川を大切に思う人々の熱意にほかならない。そして、その熱意を金銭面から支えてきたのが、自然保護のための助成金制度だった。
NACS-Jでわかっているものでは、(財)自然保護助成基金が、100万円ずつ5年間と、報告書の印刷費用70万円を提供。NACS-Jからは50万円ずつ5年間の資金提供をつづけてきた。合計820万円。皆さんの会費や寄付も、この一部を担っている。
一方、河口堰をつくった水資源開発公団でも独自にモニタリングを行っている。こちらの経費は総額14億円。堰完成時から始まったので、結果は来年にまとまるという。予算は桁違いだがNACS-Jがまとめた調査結果も内容は遜色はない。
3.長良川河口堰問題とは何だったのか
以上が、長良川河口堰でつづけられてきた5年間の追跡結果の概要だ。これらは、調査グループの手で行えた調査に限定されたので、ほかにも影響が起きている可能性は残っている。
NACS-Jでは、今年、河口堰問題特別委員会を設立する。建設からすでに28年が経過した千葉の利根川河口堰、現在計画をめぐって議論されている徳島の吉野川第十堰、そして今回5年間のモニタリング結果が出た長良川河口堰。いずれも河川の特異な環境である感潮域に大きな影響を及ぼす公共事業である。委員会ではこれらの河口堰事業の問題点を検討する予定であり、第一に、今回のモニタリング結果をもとに長良川河口堰を検討する計画である。
NACS-Jが過去に設置した長良川問題委員会委員であった研究者らを中心に、人選をすすめている。長良川で起きている事実と、着工以前に建設省が予測していたことの照らし合わせ、今から少しでも河川環境を改善する方策、河川保護行政、環境影響予測評価制度への反映など、多くの作業・議論が予想される。
すでに、地元自然保護団体や日本生態学会からは堰の運用に対して提案が始まっている。NACS-Jとしてどのような提案をするか、委員会の検討をもとに方針を定めたい。
長良川河口堰問題から、どれだけ多くのことを学び、これからの自然保護に反映させるか、全力を尽くしたい。今後とも、会員のみなさんのご支援ご協力をお願いしたい。