日本科学者会議による意見書(名古屋・瀬戸道路に関して)
(同会議の許可をいただき、全文を掲載します。なお、ぜひご注目いただきたい点を、NACS-J編集広報部で着色し、レイアウトを変更させていただいています。)
1999年4月6日
名古屋瀬戸道路アセス(瀬戸市・豊田市)
環境影響評価準備書への意見
愛知県知事 神田 真秋 様
日本科学者会議愛知支部交通問題研究委員会
アセスメント部会 代表 中川 武夫
◆この名古屋瀬戸道路は、国際博のためにあわてて計画が前倒しされたものであり、2020年になっても計画交通量が2万台~3万台/日(p10)しかないところに、有料道路を建設しても、その採算の目途は全く無いことが、関係者の間では常識となっている。このような事業は中止すべきである。
◆国際博のために計画を前倒ししたため、不十分な建設省通達による環境影響評価を実施しているが(はじめに)、環境影響評価法の施行の今年6月まで待って、正式な法律に基づく環境影響評価を実施すべきである。
◆トンネル出口から瀬戸南インターチェンジまでは約300mしかなく(p7)、交通計画的に異常であり、交通事故の確率は非常に高くなる。このような無理な計画は実施すべきではない。
◆計画交通量は平成6年度全国交通情勢調査の結果を踏まえて推計したとあるが(p10)、その推計方法を具体的に示すべきである。
◆計画交通量については、資料(p9)によれば、将来道路網への交通量配分を求めているので、この名古屋瀬戸道路、並行する若宮八草線、東海環状自動車道、第3環状線、名古屋環状2号線など関連する道路の計画交通量を示すべきである。
◆ 残土が70万m3 も出るような計画だが(p15)、道路面をあと1~2m高くして、開削トンネル延長3130mをもっと短くすれば残土不要となるはずである。道路断面構造 を再検討すべきである。幡豆町の土取りアセスがつぶれるから、意識的に残土を発生させ、国際空港の埋立てに使おうと考えているのではと勘ぐりたくもなる。
◆県の大気汚染測定局は、なぜ陶原町(N0x、CO)と瀬戸保健所(S02 、Spm、風向風速)に別れているのか。(p22)
◆浮遊粒子状物質の瀬戸市大気汚染測定所の9年度データ(p28)は、出典の「瀬戸市の環境」(平成10年度版、p14)と相違している。
◆道路交通騒音測定結果(p34)は、表の中央値だけでなく、予測に用いたのと同じ等価騒音レベルも測定しているはずなので示すべきである。
◆河川の状況で4河川しか記載していないが(p38)、新住宅アセス(p43)にあるように、この名古屋瀬戸道路が横断する赤津川、屋戸川などの1次、2次河川も触れるべきである。建設省通達では1級河川だけと定められているからというようないいわけは許されない。
◆水質について、人の健康の保護に関する環境基準の項目(p42)に、今年2月22日に環境庁告示で追加されたホウ素、フッ素、硝酸性及び亜硝酸性窒素を追加すべきである。
◆地下水の定期モニタリング調査31件中(p48)で、瀬戸市でも南山口町にもう1井戸、大阪町で1井戸で総水銀が環境基準を超過している(県環境白書:平成10年度版、p146)ことを明記すべきである。
◆その他の土地利用計画では、保安林という言葉は文章上消えていて(p88)、p90の図で、計画地のほとんどが保安林であることがわかる程度である。保安林の解除は国の権限であり、その解除にも厳しい制限がかけられている。そのことの重大性を隠すべきではない。
◆瀬戸市の廃棄物の状況のうち、し尿処理施設だけは125kl/日の能力があるとされているが(p124)、ごみ処理施設の能力、下水道の処理能力も明記すべきである。
◆環境影響評価の項目として(p126)、大気汚染の環境基準が定められており、車両から排出されることが明らかなベンゼンについては、せめて幡豆土取りアセスや空港対岸部アセスのように現況調査を行うべきである。
◆ 大気質の現地調査が5地点で行われているが(p129)、今まで何もないところに名古屋瀬戸道路ができ、国際博や新住宅市街地ができ、大気質に大きな変化 を与えるのだから、そうした変化が予想される地点での現地調査は不可欠である。少なくとも海上地区で名古屋瀬戸道路の計画地、国際博の中心部、森林体感地 区で現地調査を追加すべきである。
◆大気質の現地調査には(p129)、局地的に大気汚染が激化するはずの瀬戸南インター、瀬戸第2トンネル、トンネルの切れ目でも、現地調査を追加すべきである。
◆大気質の現地調査には(p129)、関連事業としての国際博や新住宅の予定区域を明記すべきである。
◆窒素酸化物から二酸化窒素への転換式について(p137、p140等)、その相関図を空港アセスや空港対岸部アセスなみに示すべきである。
◆建設機械の種類別機関出力(p142)が、新住宅アセス(p139)と相違している。同じ出典なのにどちらが間違っているのか。バックホー0.35m3 が82と87、クラムシェル0.4m3 が148と125、コンクリートポンプ車が192と270ps。いずれも機関出力に燃料消費率をかけて燃料消費量を推定するため、汚染物質排出強度も違ってくる。
◆建設機械の稼働台数を示すべきである。資料(p6)には、影響予測時(1時間値)の場合だけ示してあり、最大排出量とされる年間稼働台数はどこにもない(p143)。
◆建設機械の実働時間は1日6時間としてあるが(p145)、少なくとも搬出入車両は8~11時、13~16時の計8時間稼働である(資料p12、13)。どちらが間違っているのか。
◆工事用車両による大気汚染を2か所でしか予測していないが(p146)、新住宅アセス(p143)のように、塩草町でも予測すべきである。
◆排出源高さの風速推定式で、べき指数αの値が示してない(p149)。予測条件は示すべきである。
◆工 事車両の、窒素酸化物から二酸化窒素への転換式の標本数が15(p151)、つまり年間3データしかないことから、資料(p10)は、春日井中央公園局の 年平均値から、瀬戸、小牧、豊山、春日井下津局の4局の年平均値を差し引いて1データ、岡崎市大平町と岡崎市大気測定所の年平均値から、蒲郡~安城市~尾 西市の14局の年平均値を差し引いて2データとしているようだが、こんな差し引きを自動車の影響とする方法は常識的におかしい。どこが推奨している方法 か。
◆工事車両による大気汚染予測条件で、車速を制限速度とし、塩草町、若宮町は 40km/時、上之山町は50km/時としているが、国際博アセス(資料p20)では、塩草町で夜間8時間を除く16時間の平均が50.4km/時で 40km/時だったのは1回もなかった。もっと現実的な予測条件とすべきである。
◆供用時の大気質予測で、広久手町は若宮八草線と複合した予測をしているが(p159)、上之山町でも同様に若宮八草線と複合した予測をすべきである。国際博会場近くでは2本の道路がほとんど並行している。
◆供用時の大気質予測で、縦断勾配が相当に長い区間続く場合、N0xの車種別排出係数に勾配補正を行ったとあるが(p167)、どの地点にどんな勾配を用いたのか明記すべきである。
◆供用時の大気質予測の予測時期は2020年としたとのことだが(p168)、国際博開催時に確実視されている慢性渋滞時期について予測すべきである。
◆供用時の大気質予測で、「瀬戸南インターチェンジにおける計画交通量は、各ランプ及び関連道路を勘案し求めた」(p177)とあるが、「勘案」の仕方、結果としての計画交通量を明記すべきである。
◆騒音の現地調査は17地点あるが(p183)、道路騒音の影響が顕著になる名古屋瀬戸道路沿線での環境騒音を追加すべきである。
◆建設機械の騒音パワーレベル(p187)が、ピックハンマーとホイールジャンボが118dB(低騒音型パイルハンマ値を適用)とある。新住宅アセス(p164)では、134dBだが、この事業だけは騒音対策をしたピックハンマーとホイールジャンボを用いるということか。
◆建設機械の騒音予測式のうち、回折減衰による補正値Aeの条件として(p188)、主要な予測地点での工事用仮囲いの高さ、位置なども示すべきである。
◆ 建設機械の配置図は位置だけが示してあるが(p190)、そこにどんな機種が何台あるのか予測条件として示すべきである。騒音予測は新名古屋火力アセス以 来、幡豆土取りアセスなどでも、ちょくちょく間違いがあった。大きな騒音が予測された地点の予測条件を明記し、必要な対策が検討できるようにすべきであ る。
◆工事車両による騒音予測条件で、車速を制限速度とし、塩草町、若宮町は40km/時、上之山町は 50km/時としているが(p191)、国際博アセス(資料p20)では、塩草町で夜間を除く16時間の平均が50.4km/時で40km/時だったのは 1回もなかった。もっと現実的な予測条件とすべきである。
◆工事車両による騒音予測を等価騒音レベルで行っているが(p192)、こうした新しい手法を用いる場合は、現地調査での交通条件を予測式に代入し、その予測値と現況値とを比較することで再現性を確認すべきである。
◆発破に伴う騒音予測条件のうち、矩形面音源の短辺の長さAが不明だが、計算条件の表(p201)にあるベンチ高さ3.0mであることを明記すべきである。
◆供用時の車両による騒音は、予測条件の基本となる時間別台数、大型車混入率などを示すべきである(p179)。
◆騒音の現地調査は13地点あるが(p207)、道路騒音の影響が顕著になる名古屋瀬戸道路沿線での環境騒音を追加すべきである。
◆建設機械の振動レベル表(p211)で、脚注の参考資料5「騒音・振動ハンドブック」は、表中にひとつもないが、どれかの出典を間違えているのか。
◆ 工事車両による振動予測条件で、車速を制限速度とし、塩草町、若宮町は40km/時、上之山町は50km/時としているが(p215)、国際博アセス(資 料p20)では、塩草町で夜間を除く16時間の平均が50.4km/時で40km/時だったのは1回もなかった。もっと現実的な予測条件とすべきである。
◆建設機械の配置図は位置だけが示してあるが(p190)、そこにどんな機種が何台あるのか予測条件として示すべきである。少なくとも主たる振動発生源のハンマー類については明記すべきである。
◆土工工事に伴う振動予測として、振動レベルだけを予測しているが(p212)、これは人間に対する感覚補正したものであり、構造物への物理的影響や動物に対する影響を検討するためには、振動の物理量としての振動加速度レベルを予測すべきである。
◆土工工事に伴う振動予測を、条件(p215)にしたがって試算すると次のように65.5dBとなり、予測結果の59dB(2/2、p49)と異なる。どこが違うのか。
Vp=500×60.7の(2/3)乗×300の(-2)乗=0.0086
VLS=20 log0.0086+85+10 log{1-eの(-0.3/0.63)乗}=59.5
VL=59.5+8 log(1400/250) =65.5
◆ 車両走行に伴う振動予測のうち、「道路構造による補正値は、盛土道路及び切土道路の道路高からαsは10.3m、平面道路及び高架道路についてはαsは 0.0とした」(p219)は、全く意味が通じない。αsなら、単位はそれぞれdBが必要であり、少なくともプラスではなくマイナス10.3dBのはずで ある。道路高さを10.3mとして計算したのなら、そのように文章表現すべきである。
◆土工工事に伴う低周波音を、条件(p223)にしたがって試算すると次のように59dBとなり、予測結果の43dB(2/2、p53)と異なる。どこが違うのか。
T=(cos90度+2)/3=2/3
Lpeak=5.6×19の0.64乗×300の-2.2乗×(2/3)の2乗 ×(2.7×3.5)の3.5乗 =0.1509
L=20 log0.1509+85+10 log{1-eの-(0.03/0.125)乗}=58.6
◆土工工事(発破)に伴う低周波音の基本的条件となる装薬量が19kgとなっているが(p223)、同じ土工工事(発破)の騒音予測条件では60.7kgとなっている(p216)。どちらが間違っているのか。
◆河川流量の現地調査を3月から12月しか実施していないが(p246)、少なくくとも水の枯れる冬季の1~2月の流量は調査すべきであるし、本来、降雨に影響される流量は5年とか10年の動向を把握すべきである。
◆土壌汚染の現地調査として14地点あるが(p257)、名古屋瀬戸道路のトンネル工事にともなう排出土砂についても、土壌分析をすべきである。この地区の河川や地下水の調査結果から、有害物質の鉛や水銀がちょくちょく検出されており、十分な配慮が必要である。
◆注目すべき植物種の現地目視観察が平成10年の3月から11月までの9回では不十分である(p262)。注目すべき植物種が漏れていることが専門家の指摘で判明し、あわてて追加しているような既存調査を信頼して、その「補完・確認」では意味がない。
◆植生の現存量調査、年間炭素固定量(p263)は、いつ、誰が、行ったのか明記すべきである。
◆注目すべき動物種の詳細調査が1年間(p271)だけでは不十分である。
◆生 態系の調査が1年間(p278、279)だけでは不十分である。動物、植物ともに天候や人為的要件で、毎年その状況は変化している。例えば、「平成10年 は当該地域でのギフチョウの発生が極めて少なく、生息確認情報は成虫、幼虫、卵のいずれにおいても大変少なかったことから、生息確認地の消失率による予測 は不確実性が高い。したがって、食草であるスズカカンアオイの直接改変による消失率を算定し」(新住宅アセス2/2、p286)とまで表現している。それ を、ある1年間だけで把握したと称するのは許されない。
◆温室効果ガスの二酸化炭素の排出量予測条件のうち、建設機械について(p302)、最も基本的な、年間延べ稼働台数kn、1日当たりの稼働時間数khを示すべきである。
◆二酸化炭素の排出量予測条件のうち、工事用車両について(p302)、各ルートの距離Lを示すべきである。
◆二酸化炭素の排出量予測条件のうち、コンクリート打設量を22,600m3 としているが(p304)、その算出根拠、施設別内訳等を示すべきである。
◆存在時の二酸化炭素排出量は(p305)、植栽についてだけではなく、道路交通による二酸化炭素排出量を加えるべきである。現にもっと交通量の少ない新住宅アセス(p277)でさえ予測している。
◆大気質の風向・風速(2/2、p2)を7年度に限定した理由を明記すべきである。少なくとも9年度まで毎年の資料が存在するはずである。7年度が平均的な気象条件というならその証明をするためにも5~10年の資料を示し、予測条件に用いるべきである。
◆大気質の現地調査結果は期間平均値までしか示していないが(2/2、p3)、騒音の1時間値(資料p36~42)のように、生データを全て示すべきである。資料には1時間値の最大値しかなく(資料p30~31)、変動状況などが不明である。
◆NO2 の長期予測を環境基準の上限値の0.06ppmで評価しているが(工事中2/2、p5、供用時2/2、p18)、これはN02 環境基準の解釈を完全に間違えたものである。N02 環境基準は「0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内またはそれ以下であること」であり、この時の環境庁大気保全局長通達(昭和53年7月17 日)では、「0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内にある地域にあっては、原則として、このゾーン内において、都市化・工業化にあまり変化がみ られない場合は現状程度の水準を維持し、都市化・工業化が進む場合はこれを大きく上回ることとならないよう努めるものとする。……なお、1日平均値が 0.04ppm以下の地域にあっては、原則として0.04ppmを大きく上回らないよう防止に努めるよう配慮されたい。」とされ、約1年後の環境庁大気保 全局長通達(昭和54年8月7日)では、このゾーンによる地域区分を判定している。愛知県では、0.06ppmを超える地域は名古屋市、東海市、知多市等 だけであり、0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内は半田市、碧南市、刈谷市等だけである。つまり、この瀬戸市、豊田市は0.04ppm以下の 地域であり、原則として0.04ppmを大きく上回らないよう努める必要がある地域である。
◆騒音の現地調査で、地点番号10~14の海上地区を中心として、夕方に70~80dBの騒音(中央値)が出現しているが(2/2、p26)、このような高い異常値がでた場合は、その原因を調査すべきである。測定者や測定器に問題はなかったのか。
◆ 騒音の現地調査で、地点番号4の夕方に27dBの騒音(中央値)が出現しているが(2/2、p26)、このような低い異常値がでた場合は、その原因を調査 すべきである。測定者や測定器の扱い、測定レンジの間違いは無かったのか。これも地点番号10~14と同じ海上地区である。
◆工事中騒音の予測結果(2/2、p31)に、騒音発生源の種類と台数を明記すべきである。予測条件も示さずに結果を信ずるわけにはいかない。
◆供用時の騒音予測評価で、名古屋瀬戸道路、若宮八草線の境界での環境基準を70dBとしているが(2/2、p35)、注にある環境庁告示では、そこまで定義 していないため、この表現は間違いである。また、準備書の縦覧時点では、知事はまだ幹線道路に近接する空間の指定をしていない。なぜ勝手に決めたのか。そ れとも県からそのように表現せよと指示があったのか。国会でも問題指摘されているように、中央環境審議会ではほんの例外的に定めた幹線道路に近接する空間 の70dBを、環境庁が勝手に市長村道にまで拡大するよう通知しているだけである。NO2 の環境基準の通知(瀬戸市は0.04ppmを大きく上回らないよう防止に努める)を忘れ、都合よく騒音の通知だけを守るという姿勢は許されない。
◆供用時の騒音予測結果が、一般部とインターチェンジ部しかないが(2/2、p35~37、39~42)、トンネル坑口部周辺の予測方法が示してある(1/2、p204~206)。その結果を明記すべきである。
◆工事中の水質について「トンネル工事による濁水は、適切な処理」「コンクリート工事による排水は、適切な排水処理を行う」(2/2、p64)の内容を具体的に示すべきである。
◆ 地下水の現地調査が4月から12月で評価したため、最低水位が12月という場合が多いが(2/2、p71)、問題の多くなる地点9~13がこの期間しか測 定していないからだと思われる。せめて年間を通した資料で評価すべきである。それでなければ地点1~8は1年以上調査しているから(1/2、p240)、 その資料から、最低水位の月を示すべきである。
◆地下水の涵養地域が井戸水を生活に使用している地域に限定しているため、工事による影響はほとんどないと推測しているが(2/2、p78)、注目すべき植物として遺伝子の調査までしているシデコブシのための地下水涵養地域を定め、そこへの影響を検討すべきである。
◆河川流量の変化で、洪水時の安全性だけを評価しているが(2/2、p82)、冬季などで流量が減少したり、水が枯れてしまった時の、水生動物への影響も検討すべきである。
◆土壌の含有量試験で全体として鉛、水銀が多く含まれている(2/2、p99)。土壌環境基準で何も検出されないからといっても(2/2、 p100~101)、その検査はpHが5.8~6.3の弱酸性、4~6時間の振とうで作成した検液を分析するだけだから、pH4近い酸性雨に1年以上も接 触していれば、鉛が溶出してくる危険性は多い。そうした点を考慮した検討が必要である。
◆直接改変により、環境保全上で生産機能の高い土壌が17%も消失(2/2、p123)するような計画は、再検討すべきである。
◆直接改変により、消失予定の生産機能の高い土壌は54ha(内、道路事業で5ha)もあるが、これだけの表土を「道路のり面の緑化回復にあたってはできる限り活用する」(2/2、p124)ことが可能なのか。どれぐらい、どこへ活用できるのか示すべきである。
◆光害について、漏洩光を抑えた灯具の採用、暖色系の照明採用で、実行可能な範囲内で低減が図られると判断しているが(2/2、p134)、ゲンジボタルへ の影響として、「夜間照度は、新月に近い時期(月齢2.5)に計測を行った結果、4河川とも0~0.1 Lxと低い値であった…暗闇の状態にあるといえ る」(2/2、p378)。「2本の幹線道路が河川上部を横断することによる夜間照度の変化が予測された」(2/2、p435)。こうしたことを明記すべ きである。
◆日照障害の予測を受照面高1.5mと4mで行っているが(2/2、p136~139)、実感に合わせるため、地表面での予測を行うべきである。
◆日照障害の予測が上之山団地でしか行われていないが(2/2、p136~139)、全線、特に海上地区での地表面での日照障害を予測し、豊かな植生にどんな影響を与えるかを検討すべきである。
◆植物の10年度調査で単子葉植物が99属、206種となっているが(2/2、p140)、国際博アセスでは98属、205種となっている(p493)。当然、合計も1属、1種多くなっている。どちらが間違っているのか。
◆林種別現存量の計算表で(2/2、p176)、幹材積の調査方法、調査結果、根拠を示すべきである。注の「愛知県資料・図上計測値を基にした」では全く判断できない。
◆林種別年炭素固定量計算表で(2/2、p177)、幹成長量の調査方法、調査結果、根拠を示すべきである。注の「愛知県資料・図上計測値を基にした」では全く判断できない。
◆注目すべき植物種で、直接改変を受けるのは49種中23種、株数あるいは生息箇所の半分以上が消失するのは6種ある(2/2、p193)。このような計画は再検討すべきである。
◆注目すべき植物種で、直接改変を受けるのは49種中23種とあるが(2/2、p193)、新住宅アセス(2/2、p174)では47種中21種とある。どちらが間違っているのか。
◆愛知県内で唯一の生息地のスミレサイシンについては、高架下になるため「代償措置として移植を実施する」(2/2、p193)とあるが、移植先の状態、その後の管理方法などが示されないまま安易に移植できると思うのは間違いである。このような計画は再検討すべきである。
◆植生からみた特徴的なエリア5地区のうち、「4地区に影響が及び、量的な減少とともに質的な変化をもたらす可能性が予測された」(2/2、p215)。このような計画は再検討すべきである。
◆注目すべき植物群落で、直接改変により、サクラバハンノキ群落、モンゴリナラ群落で消失する部分がある。生息環境変化により、貧栄養湿地植生も涵養水の減少が予測され、衰退といった間接的な影響の可能性がある(2/2、p218)。このような計画は再検討すべきである。
◆メダカが環境庁により、絶滅危惧種に指定されたので、注目すべき動物種リスト(2/2、p251)に追加して、必要な調査を実施すべきである。
◆注目すべき動物種リストなどのもとになった調査(2/2、p251)は、杜撰さを自然保護団体から指摘されたものである。夏鳥のサンコウチョウ、コマドリが 冬場に見つかったとする報告の問題を指摘され、集計ミスで逃れ、2回目のデータ公開でも3月にいるはずのないサンコウチョウ、センダイムシクイが記述され ていた。このような素人集団の調査結果で、こんな大規模な開発行為を認めるわけにはいかない。
◆ゲンジボタルの全調査日の合計固体数から、推定総数を導いたと思われるが(2/2、p287)、その根拠、算出方法を示すべきである。
◆ゲンジボタルについて、全調査日の合計固体数が最も多い吉田川D地区の推定総数と推定生息密度を算定すべきである(2/2、p287)。
◆動物種に対する工事中の保全措置で、オオタカ、ハチクマ、カワセミ、アオゲラ、ハッチョウトンボ、ギフチョウの6種が示してあるが(2/2、p297)、ゲンジボタルについても保全措置を記載すべきである。国際博アセス(p631)には示してある。
◆道路によるムササビの行動圏の分断に対し、「行動圏が道路により分断される場所においてもできるだけ既存の樹林を残したり」とあるが(2/2、 p298)、新住宅アセス(2/2、p272)では「道路両端に高木の樹林帯を設ける」ことと非現実的ながら積極的な設置計画がある。どちらが間違ってい るのか。
◆工事による忌避反応によって移動するムササビの 緊急避難先として巣箱の用意をしたり、人工林の中に移動個体の受入れ環境として巣箱を設置することは事業者の勝手だが、そのことで「実行可能な範囲内での 低減と代償を図った」(2/2、p300)という結論を導くことは許されない。
◆国レッドリストにあるオオタカの営巣期高利用域22メッシュ中5メッシュ、ハチクマでは16メッシュ中6メッシュが直接改変域となる(2/2、p303)。このような計画は再検討すべきである。
◆カワセミの営巣可能域53か所中18か所が直接改変を受け、水辺環境そのものの変化、水位上昇、河川改修等による崖地や巣穴の水没、消滅といった状況が予 測される(2/2、p303)。どんなに代償措置をとったとしても、現在の自然環境は戻らない。このような計画は再検討すべきである。
◆アオゲラ等繁殖鳥類については、繁殖可能性4以上の24か所中7か所が消失するため、「繁殖場所として利用されている空間に対する影響は比較的大きいものと予測された」(2/2、p307)。このような計画は再検討すべきである。
◆ギフチョウの食草のスズカカンアオイが20647株中4351株(21%)消失する(2/2、p316)。このような計画は再検討すべきである。
◆ラインセンサス結果から、オオタカの餌生物としての中型鳥類の各環境類型別現存量を算定したとあるが(2/2、p336)、算定方法を示すべきである。
◆オオタカの育雛期の調査対象地域全体の中型鳥類の現存量は約170g/haと算定しているが(2/2、p336)、それを確認するために、環境類型毎の季節別現存量を図中に数値で示すべきである。
◆オオタカの育雛期の環境類型別の陸生昆虫類の現存量を算定したとあるが(2/2、p337)、算定方法を示すべきである。
◆同じ広葉樹林なのに、中型鳥類では271.7ha(2/2、p336)、陸生昆虫類では209.4ha(2/2、p339)と差がある理由を説明すべきである。
◆植物(種子及び果実)現存量120kg/ha(2/2、p339)の算定方法を示すべきである。本文の算定手法(2/2、p338)だけでは、この値は算定できない。
◆植物(種子及び果実)生産量算定のための調査結果(2/2、p446)が、でたらめである。種子トラップ法の小計(推定種子生産量kg/ha)の欄で、コナラ群落アカマツ下位群落だけが数値があり、残りの6群落全てが0.000となっている。
◆植物(種子及び果実)生産量算定のための調査結果(2/2、p446)で、コナラ群落アカマツ下位群落の0.085kg/haも調査した方形区面積が記載 されていないため逆算すると53.606g÷85g/ha=0.63haと膨大な調査区となるが、こんなに大規模に調査したのか。ちなみに枝打ち法では、 この群落の方形区面積は100m2 である。
◆主要餌生物 群の量的関係で(2/2、p342)、中型鳥類の現存量(170g/ha)が、その餌とする陸生昆虫類の現存量(210g/ha)と同じオーダーでは、中 型鳥類の餌の陸生昆虫類が1年もたたずに絶えてしまう。このような科学的に非常識な結果を吟味もせずに記載する環境影響評価は全く信用できない。
◆フクロウの育雛期の環境類型別の小型哺乳類の現存量を算定したとあるが(2/2、p348)、算定方法を示すべきである。特に、資料(2/2、p448) にある調査結果に再捕獲が記載されていないが、算定方法の0i(環境類型iに対応する調査区域内再捕獲個体数)はどうしたのか。また、環境類型も示してな いが、どのようにまとめたのか。
◆フクロウの育雛期の環境類型別の土壌動物の現存量を算定したとあるが(2/2、p348)、算定方法を示すべきである。
◆フクロウの育雛期の環境類型別の土壌動物の現存量を算定したもとになるmi(環境類型iに対応する調査区域内採集土壌動物重量)が資料にさえないので示すべきである。
◆フクロウの餌のネズミ類の餌となるコナラ等の堅果の種子量現存量を算定したとあるが(2/2、p350)、算定方法を示すべきである。
◆淡水魚類の現存量推定で(2/2、p357)「各個体の体長より体重を算出した」とあるが、読み取れるのは採集個体数だけである。各個体の体長を示すとともに、体長から体重への算出方法を示すべきである。
◆淡水魚類の現存量推定で(2/2、p358)、海上砂防池のブラックバス43000gから逆算すると、投げ網5回で35.325m2 に2匹だから、池面積8947m2 には506匹となり、85g/匹となる。ところが、広久手堰堤のフナは14.13m2 に2匹だから、池面積325m2 には46匹となり、87g/匹となってしまうがこれで本当に正しいのか。
◆カイツブリに関連した主要餌生物群の階層別現存量の図に、カイツブリも淡水魚類も現存量の値が記載されていない(2/2、p359)。カイツブリは本文に 各番の現存量は1200gとあるので推定できるが、淡水魚類については算定方法があるだけで、現存量そのものは求めていない。このような不十分な階層別現 存量で生態系の環境影響評価を終了させることは許されない。
◆オオタカを頂点とする食物連鎖の関係性で、主要餌生物群の階層別現存量の変化予測がしてあるが(2/2、p426)、それぞれの消失量の算定方法、条件を明記すべきである。
◆フクロウを頂点とする食物連鎖の関係性で、主要餌生物群の階層別現存量の変化予測がしてあるが(2/2、p427)、それぞれの消失量の算定方法、条件を明記すべきである。
◆ フクロウを頂点とする食物連鎖で、「西ユニットでは…生息条件が不適となる可能性が考えられる。又、東ユニットは…元々不安定…その傾向が助長される可能 性も示唆し得る」「フクロウを頂点とする食物連鎖系の1/3で上位種の欠落が生じることになる。…階層構造に変化が生じる可能性がある」(2/2、 p427)とまで予測していながら、ちょっとした環境保全措置でごまかす姿勢は許されない。事業計画の根本的再検討をすべきである。
◆キツネ、テンについて「直接改変による行動圏域の減少に対する影響も大きく、事業実施後のキツネ、テンの生息維持は困難となる可能性もあると予測され た。」(2/2、p431)とまで予測していながら、ちょっとした代償措置でごまかす姿勢は許されない。事業計画の根本的再検討をすべきである。
◆2号トンネルの掘削による赤津川流域のシデコブシ生育地域の地下水変化について「地下水流動の変化を予測(浸透流解析)したところ、トンネル掘削時の一時的な地下水位低下は1m前後に収まるものと予測された」(2/2、p437)の具体的内容を示すべきである。
◆2号トンネルの掘削による赤津川流域のシデコブシ生育地域の地下水低下が1m前後もあって、「シデコブシ…生育立地を支える地下水文環境が変化し、それらの生育に影響を与える可能性もある」(2/2、p437)このような計画は再検討すべきである。
◆直接改変に含まれる歴史的・文化的遺産について、「窯跡」のうち11世紀のものが2基(40%)、13世紀のものが6基(17.6%)直接改変される (2/2、p521)。それらについて「文化財保護法の規定に基づき適切に対処する」というのは、全くの気休めであり、適当に写真を撮り、部分的に必要そ うな物を保管するだけでとなる。せめて、国際博の会場内にそのまま保存して展示の一部とするなど、現況保存を検討すべきである。
◆保全重要性が高い利用ルートに対して、付替え道路、付替え河川、遮蔽植栽などが掲げられているが(2/2、p583~597)、それぞれについて、具体的な工法等を示すべきである。
◆ルート1~10(2/2、p600~618)利用の多い環境特性がカラーでないため、色別の植生状況が不明である。
◆伐採木が約1000トンもあるが(2/2、p620)、その算定根拠を明記すべきである。
◆伐採木が約1000トンもあるが(2/2、p620)、このうち、どれだけ、どこに、どう活用するのか明記すべきである。
◆伐採木の有効活用策として、発酵させ、肥料としての活用を図るとあるが(2/2、p620)、国際博事務局が堆肥化施設を設置する予定なので、事前に譲り受けて活用することで2重投資を防止すべきである。
◆70万m3 の残土(2/2、p620)の搬出のための交通量は、大気、騒音、振動の予測にどう組み込んであるのか。
◆工事に伴う廃棄物量を、一般廃棄物(可燃物、不燃物、資源ごみ等)、産業廃棄物(木屑、コンクリ…ト殻、金属類等)別に、発生量ぐらいは予測すべきである。新住宅アセス(2/2、p588)でもそれなりの予測をしている。
◆温室効果ガスの予測でコンクリート工事における型枠使用量(2/2、p622)の根拠を示すべきである。
◆予測・評価の結果講ずることとした環境保全措置(2/2、p598)で、生態系(第17節)については、典型性の観点から、中型哺乳類の移動についてだけ触れているが、特殊性の観点からシデコブシについても記載すべきである。
◆事後調査については、地下水の調査結果は告示、縦覧しか考えていないが(2/2、p635)、個人所有井戸の被害状況は当然、井戸所有者ごとに通知すべきである。名古屋環状2号線北東部では、すでにそうした実績がある。