約8割の都道府県が 県レベルのレッドデータブックを発行
会報『自然保護』No.430(1998年10月号)より転載
自然保護の根拠としてのレッドデータブック(RDB)づくり
NACS-Jでは、野生生物の生息地保護や生物多様性保全のための重要な科学的根拠となる『植物群落レッドデータブック』を1996年に発行し、その後、GIS(地理情報システム)を導入してデータを電子情報化し、自然保護活動に活用すべくデータベースの構築をすすめてきた。
今年(1998年)6月には、来年施行される環境影響評価法に合わせ「植物群落レッドデータ・ブック」をもとに「環境影響評価技術指針に盛り込むべき重要な植物群落~保護上の危機の視点から選んだ第1次リスト」を発表した。
環境アセスメントを行なう際には、最低限このリストにある植物群落を調査し、保全を図るよう関係各所に働きかけている。
『RDB植物群落』を活用するために委員会を発足準備
さらに、『植物群落レッドデータ・ブック』が自然保護施策に有効に活用される方策を検討する「RDB植物群落活用委員会」をたちあげることを決め、1998年6月20日にその準備会を開催した。
準備会では、今後の調査のあり方、情報共有化のためのネットワーク構築の可能性、『植物群落レッドデータ・ブック普及版』の作成、地域レベルでの植物群落保全のあり方などについて検討した。ここでの議論をもとに委員会を立ち上げ、具体的な活動に取り組む予定である。
約8割の都道府県が県レベルのRDBを発行
これらの活動を効果的に進める参考とするため、保護研究部では1998年8月、都道府県でのレッドデータ・ブック作成状況および自然環境データの収集・管理・活用状況の実態を把握する調査を実施し、全都道府県から回答を得た。その結果の一部を紹介する。
各都道府県でのレッドデータ・ブックづくりの現況は、下表のとおりである。
都道府県別RDB作成状況調査結果(1998.9 /NACS-J保護研究部調べ)
全国で約80パーセントの都道府県がすでにレッドデータ・ブックを発行したり、検討・調査に入っている。ただし、調査対象はその8割の都道府県で植物種と動物種となっており、生態系や生物多様性のために欠かせない重要なデータとなる植物群落を対象(対象予定)に入れているところは宮城・千葉・石川・兵庫・和歌山・福岡の各県と数少ない。
都道府県以外でも、民間団体によるレッドデータ・ブックがいくつか作成されているが、地域単位でのレッドデータ・ブック作成がすすむことによって、自然保護区域の設定の見直しや、土地利用計画策定、環境アセスメント、生物多様性保全やシゼンホゴの考え方の普及など自然保護施策へのさらなる活用が期待される。NACS-Jでは、今後も生物多様性保全における植物群落保全の重要性を広く伝えていきたいと考えている。
なお、この植物群落レッドデータブック・データベースの活用事業には、NTTデータ通信株式会社が10周年を記念して社員に呼びかけ実施した「NTTデータ10周年記念いちまる募金」より1000万円のご寄付をいただいた。自然保護活動へのご理解とご支援に、この場を借りて厚くお礼申し上げます。
(開発法子・保護研究部研究担当部長)