絞り込み検索

nacsj

日本のおもな干潟の43%が危機的状態

1998.03.16
活動報告

諫早干潟、東京湾三番瀬、藤前干潟などの干潟の埋め立てや消失をもたらす事業が、日本全国で進んでいますが、NACS-Jではこれまで断片的だった情報をとりまとめ、各地の現状を総括し、それぞれの干潟の「日本全体における位置づけ」がわかるようにしました。

各地の干潟を個別の点としてではなく、線でつながったネットワークのようにとらえることが重要です。とくに渡り鳥にとっては、途中の一カ所が消失するとそのネットワークが分断されることを意味します。ぜひ地図を開いて、下表のデータとその位置関係を眺めてください。

NACS-Jでは、この全体像から見た各地の問題点を、今後も強く指摘していきます。

編集広報部・広報担当主任 森本言也


この集計によって判明したこと

  • ●今までの断片的な複数の資料を重ね合わせたことで、初めて日本の干潟の現状の全体像をつかんだ(この資料は第二次集計の段階)。
  • ●おもな干潟は、日本に37カ所あった。
  • ●環境庁がとくに鳥のために重要だと公表しているのは13カ所あるが、その中で、将来にわたっても確実に残せる形になっているのは、1カ所だけ。そればかりか、その中で危険な状態にあるものが7カ所もある。なぜここを守れるしくみが作れないのだろうか。

  • ●現在の開発事業の進行状況などからみて、もっとも危ない状態にあるのが藤前干潟。
  • ●このうち11カ所には、現在環境改変の開発事業がすすんでいる。さらに上記の7カ所を加えると、37カ所中16カ所、すなわち日本のおもな干潟の43%の環境が劣化する。これでよいのか。

全国の主な干潟(河口を含む)の現状

・第二次集計<概要>

(1998.3.16)
No 県名 干潟・河口名 概算面積 改変計画・改変要因があるもの
1 宮城県 蒲生干潟 5ha 隣接海岸の港湾整備計画 *
2 千葉県 利根川河口 ★ 河口堰による堰上部の湖沼化と感潮域の変化 *
3 千葉県 盤洲干潟(小櫃川河口) 780ha
4 千葉県 谷津干潟 42ha ● ★
5 千葉県 三番瀬干潟 1200ha ★ 危険 千葉県による新港建設と埋め立て計画(工業団地造成)
6 東京都 高洲干潟(三枚洲) 16ha ★
7 神奈川県 多摩川河口 15ha ★
8 神奈川県 相模川河口 5ha 建設省による相模大堰建設計画 *
9 愛知県 庄内川河口干潟 55ha
10 愛知県 汐川干潟 280ha ★ 隣接地にヨットハーバーおよび埋め立て計画(工業用地) *
11 愛知県 藤前干潟 250ha ★ 危険 名古屋市による埋め立て計画(ゴミ処分場建設)
12 愛知県 名古屋港西二区干潟 20ha ★
13 三重県 木曽三川河口域 8ha 木曽岬干拓および地盤沈下(地下水の汲み上げ等) *
14 岡山県 備讃瀬戸西に点在する干潟群 計167ha 港湾施設建設と土地造成 *
15 広島県 備後灘に点在する干潟群 計620ha 港湾施設拡張事業 *
16 山口県 周防灘東部に点在する干潟群 計326ha 護岸工事、埋め立て、浚渫工事 *
17 徳島県 吉野川河口干潟 500ha ★ 危険 自動車道路の設置計画および第十堰の可動堰化計画
18 福岡県 博多湾和白干潟 80ha ★ 危険 福岡市による埋め立て(人工島建設) *
19 福岡県 曽根干潟 500ha ★ 危険 沖合空港整備計画
20 福岡県 筑後川河口干潟 1051ha 地盤沈下
21 佐賀県 筑後川河口干潟 3438ha
22 佐賀県 嘉瀬川・境川河口干潟 2995ha
23 佐賀県 塩田川・鹿島川河口干潟 2783ha
24 長崎県 諌早湾干潟 10000ha ★ 壊滅 農水省の防災干拓事業による閉め切りで3550haが壊滅 *
25 熊本県 荒尾海岸干潟 4800ha 護岸工事による自然海岸の縮小
26 熊本県 菊池川河口干潟 1007ha
27 熊本県 球磨川河口干潟 1094ha
28 熊本県 八代干潟 837ha ★ 危険 港湾施設拡張計画
29 大分県 臼杵干潟 180ha 港湾施設拡張計画
30 沖縄県 塩屋干潟 66ha
31 沖縄県 沖縄島中城湾干潟 205ha 港湾施設拡張事業 *
32 沖縄県 石垣島網張干潟 30ha 上流部白水谷におけるダム計画
33 沖縄県 西表島仲間川河口干潟 32ha
34 沖縄県 西表島船浦湾干潟 54ha
35 沖縄県 西表島後良川河口干潟
36 沖縄県 西表島浦内川河口干潟 37ha
37 沖縄県 西表島仲良川河口干潟 31ha

[凡例]
● :ラムサール条約登録湿地(国設鳥獣保護区指定地)
★ :環境庁が公表した「シギ・チドリ類重要渡来地域」掲載地
* :改変事業・改変のおそれのある開発工事が進行中のもの
危険:特に危険な状態にあると考えられるもの
( ):干潟のおよその面積(浅海部を一部含む)

参考とした資料

  • 開発計画の進行または環境悪化の恐れがある、日本の主なウェットランド(NACS-J保護部,1992)
  • 日本の主な干潟 シギ・チドリ渡来地(日本湿地ネットワーク,1997)
  • 地球を旅する野鳥たち~報告書(日本湿地ネットワーク,1997)
  • シギ・チドリ類渡来湿地目録(環境庁,1997)
  • 第4回自然環境保全基礎調査 海域生物環境調査報告書 第1巻・干潟(環境庁,1997)
  • NACS-J会報「自然保護」(1992~1998)

前のページに戻る